1099.物価上昇率目標は年金生活者には厳しい |
さて、年金生活者の立場から見れば2%のインタゲは過酷なものになるでしょう。理由は年金の『マクロ経済スライド』です。平成17年4月から導入されました。マクロ経済スライドでは、既裁定者(年金を今もらっている人)の改定率は、〔物価の伸び率-スライド調整率〕 となり、年金の伸びしろが抑制され、実質的な年金の価値が下がっていきます。年金給付を抑制しようとする国の方針なのです。
スライド調整率とは、公的年金全体の被保険者(掛け金を払っている人)の減少率+平均的な年金受給期間(平均余命)の伸び率を勘案した一定の率ですが、平成16年度の改正時点ではスライド調整率は平成37年度(2025年度)までは平均0.9%程度と予測されています。このマクロ経済スライドにより、厚生年金額の改定は、仮に物価上昇率が2%の場合、2%-0.9%=1.1%となります。物価上昇率がスライド調整率より小さければ、算式ではマイナスになりますが、年金改定率はマイナスとはしません。物価が下落した時もスライド調整はしません。マクロ経済スライドの話をする場合、過去の経緯を避けては通れません。まず、物価上昇率の対前年度比を経年的に見てみましょう。
平成12年度(2000年度)▲0.3% スライド率は特例措置により据え置き
平成13年度(2001年度)▲0.7% スライド率は特例措置により据え置き
平成14年度(2002年度)▲0.7% スライド率は特例措置により据え置き
平成15年度(2003年度)▲0.9% スライド率は、0.991
平成16年度(2004年度)▲0.3% スライド率は、0.988
平成17年度(2005年度) 0.0% スライド率は、0.988
平成18年度(2006年度)▲0.3% スライド率は、0.985
平成19年度(2007年度) 0.3% スライド率は、0.985
平成20年度(2008年度) 0.0% スライド率は、0.985
平成21年度(2009年度) 1.4% スライド率は、0.985
平成22年度(2010年度)▲1.4% スライド率は、0.985
平成23年度(2011年度)▲0.7% スライド率は、0.981
平成24年度(2012年度)▲0.3% スライド率は、0.978
これを見てもわかるように、H12年度~14年度は、特例法(物価スライド特例措置による従前額保障)により年金額が据え置かれました。H15年度になって、さすがにこれはまずい。現役世代との均衡を保つべきとの観点から、初めて年金額が引き下げられたのです。特例措置分の差、すなわち本来水準との差はH24年度で▲2.5%まで開いてしまいました。この間、余分に給付された年金は総額で6.9兆円になります。野田佳彦が自爆解散した去年11月16日、ドサクサにまぎれて法律を成立させ、H25年10月からH27年4月にかけて3段階にかけて引き下げることとなったわけです。このことからおわかりのように年金給付という既得権にさわるのは簡単ではありません。マクロ経済スライドについても、これまで余分に給付されていたことを考えるとやむを得ない面もありますが、仮に物価上昇率2%が相当年数続けば、年々給付水準は年々厳しくなっていくものと考えます。
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(by年金アドバイザー、AFP認定者、マネーライター 湾田)