日本FP協会の会員向けページの9/5付け記事に「金を組み入れた分散投資の効果と留意点」という特集がありました。その中から、一部を引用し、再構成して以下に掲載しましたので、ご参考となさって下さい。
2019年8月6日、大手貴金属商の消費税込み金地金小売価格(=販売価格)が1グラム当たり5,437円と、1980年2月以来、約40年ぶりの高値を付け、金投資に対する関心が高まっています。
金は、世界的に政治・経済情勢が激動し、国が発行する通貨(特に基軸通貨である米ドル)に対する信認が揺らいだとき、あるいはその信用度が低下したとき、歴史的にどこの国でも、またいつでも一定の価値が認められてきた、信用リスクのない金に対する需要が高まり、価格は上昇してきました。
具体的に見てみると、金価格が自由に決められるようになった1971年以降で、価格が大きく上昇したのは次の6つの時期です(第2次世界大戦後、1971年までは金ドル本位制の下、1トロイオンス(31.1035グラム)=35米ドルという公定価格制が採られていました)
(1)1973年~1974年にかけての第1次オイルショックの時期
(2)1979年~1980年の第2次オイルショックを契機に中東情勢が大きく緊迫した時期
(3)1982年から1983年にかけてのメキシコ債務危機の時期
(4)1985年以降のドル安、ドル不安の時期
(5)2002年以降の米国を中心とした対テロ戦争およびドル不安の時期
(6)2008年9月のリーマンショック以降の国際金融危機の時期
このように、金価格は米国の金融政策とも密接にリンクしていることがわかるのではないでしょうか。また、金価格が本格的に上昇しているときというのは、決していい経済状態とはいえず、株式や債券、預貯金などの価値が大きく値下がりしたり、実質的に目減りしかねないときです。こうしたときに金を保有していると、金価格の値上がりで他の資産の目減りをカバーすることが期待できるようになります。
金は、世界中で取引が行われている国際商品の1つです。このため、金価格を決定するのは、ある国における需給関係ではなく、世界全体における需給関係です。また、金の国際価格は米ドル建てで表示されているため、日本で投資する場合は、金価格の変動そのもの以外に為替相場の影響を強く受けます。海外市場でドル建て価格が変動しなくても、円高・ドル安になれば国内金価格は値下がりし、円安・ドル高になれば国内金価格は値上がりします。国際金価格の変動と為替相場の変動、この両者が国内の円建て価格を決定することになります。
金は、分散投資の観点からは、いざというときに財産保全の役割を果たしてくれます。この点に注目する場合、金投資の基本は、国際情勢や経済情勢が安定しているときにコツコツと購入し、危機的な状況が起きたときに高値圏で売却するということになります。危機的状況がいつ起きるかは分からないので、投資期間としては長期投資が前提になります。買い方としては、一度に大量に買うよりも、購入時期を分散して買い付けたほうが、高値づかみが避けられ、リスクを軽減できます。
ただし、金は平時においてはあまり価格が動きません。また、金は誰の債務でもないので、ただ単に保有しているだけでは利子や配当などのキャッシュフローを生みません。このため、資産全体に占める割合が大きくなりすぎると運用効率が悪くなります。この点で、欧米での古くからの経験則が教える資産の5~10%を金で持つという考え方が参考になると思われます。
つまり、金は、何か危機的な状況が起きたときのリスクヘッジの役割、あるいは資産全体の価値を保全する保険の役割を果たしてくれるといえます。したがって、将来の国際情勢や経済情勢に対して不安を持つ場合は、金も運用資産の中に入れておいたほうが安心感が高まります。
ここで理解しておく必要があるのは、「強いドルは弱い金、弱いドルは強い金」という対応関係にあるということです。米ドルと金の国際価格は基本的に逆相関の関係になっており、ドル高のときは金価格(国際価格)が下落、ドル安のときは金価格(国際価格)が上昇する可能性が高くなります。
関連して、金はただ単に保有しているだけでは利子を生まないため、米国の金利上昇は金価格の下落要因、金利低下は金価格の上昇要因になります。このため、金投資を考える場合、特に数年程度の運用期間を想定する場合は、米国の金融政策の動向に注意を払う必要があります。
ひとくちに金投資といっても、いろいろな取引の仕方があります。大きく分ければ、金を実際に保有する現物取引(現物商品)と先物取引に分けられます。現物商品としては、金地金、投資用金貨、純金積立が代表的です。売買コストを考慮すると、まとまった資金で投資する場合は金地金(1キロバー、500グラムバーなど)が有利、小口の資金で投資する場合は金貨(メイプルリーフ金貨、ウィーン金貨ハーモニーなど)が有利、毎月3,000円以上といった少額の資金で積立式に投資する場合は純金積立を利用する、というのが基本です。他に、金現物の保有にこだわりがなければ、金価格と値動きが連動する金ETF(上場投資信託)もあります。
金先物取引は、少額の資金(証拠金)で多額の取引ができ、基本的には短期売買でハイリターンを目指すリスクの大きい取引です。短期的な金価格の変動に投資する取引であり、投資金額以上の損失を被ることもあり得ます。ここまで述べてきた資産価値を保全する保険としての役割を果たしてくれる金投資とは異質の取引であり、十分な注意が必要です。
