安倍政権は、財政健全化の目標である、「2020年度のPB黒字化」を無期限先送りにしようとしているようです。
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安倍総理はNY証券取引所でスピーチし、日本の社会保障制度を「全世代型」に改革していくため、消費税の税収の使いみちを変更し、財源を確保する考えを示唆した。「これまでの社会保障は、リタイアした高齢者への給付が中心でした。これをもっと現役世代に振り向ける。その実現には大きな財源が必要となります。私はこの問題からも逃げることなく答えを出す。そう固く決意しています」(安倍首相)
安倍総理は「人生100年時代を前提に社会保障制度を全世代型に改革していく」と強調した上で、「財源の問題からも逃げることなく答えを出す」と述べ、消費税の税収の使いみちを変更し、財源を確保する考えを示唆した。
自民党内では再来年の10月に予定している消費税の10%への引き上げによる増収分の使いみちを、もともと計画していた「国の借金の返済」などから「社会保障の充実」などに変更する案が検討されていて、総選挙での争点にするものとみられる。(TBSサイト、21日0:34より)
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9/19付け日経によると、与党は「消費税の使途変更を衆院選で問う」としています。2%の消費増税による税収増を5兆円と見込み、4兆円を財政健全化に、残り1兆円を社会保障の充実に充てる。これが財務当局の考え方でした。これに対して、安倍首相がとなえているのは、4兆円のうち、1兆円超を教育費に充てようというものです。教育無償化が政策の目玉になります。教育無償化の是非については、ここでは議論しませんが、財政再建を先送りにするということは大きな方針転換です。財政再建が遠のけば、円の売り材料になる可能性もある。
日本には1000兆円を超す累積債務がある。これを市場はどう評価しているのでしょうか。1000兆円のうち、日銀のHPによれば、2017.9.8時点で日銀が397兆円保有しているという。全体の約4割にものぼる。また、世界最大の債権国と目されている、日本の対外資産は350兆円以上ある、といわれています。純債務はさほどでもない…これが高橋洋一氏らの「財政健全化はすでに達成されている」という主張の論拠ともなっています。今のところ、国債も通貨も暴落していないというのは、市場は高橋氏寄りの見方をしているのかもしれません。今後、安倍首相が財政再建の無期限先送りを主張したとき、市場がどういう反応をするのか、これはやはり気になるところです。もはや事態を静観するしかありません。