ジム・ロジャーズという著名な投資家が、この1~2年、多くの著作物を日本語版で大量に出版している。この人の著作は、花輪陽子とかいう英語が堪能らしいFPらがインタビューし、過去のインタビュー内容も合わせて、近著として、最近の情勢に合わせたタイトルで、ジム・ロの名前だけ借りて本を量産している。私も何冊か買って読んだが、きわめて常識的なことを書いており、投資家の基本的姿勢とはかくありたい、という内容だった。ただし、最新情報はまえがきとあとがきだけだ。
ジム・ロジャーズは、ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと併せて、日本では有名な外国人投資家の3人に挙げられる。バフェットの本も読んだが、彼の投資姿勢は、ぶ厚い彼の著書を要約すれば、①安く買って高く売る、②理解できないものには投資しない、この2点だ。ジム・ロジャースも、ほぼこれに近い。(ただ、ソロスの本は別だ。価格に見合う内容がある)なんだ、そんなことは当たり前の話だ。それができれば苦労はない、と言う人は多いだろう。しかも、これらの本を書いている時点で、彼らはすでに大金持ちだ。しかも超がつく大金持ちといってもいい。
インタビューのコメントをつなぎ合わせて、花輪ら出版社の連中が本を売ろうとして、分冊にしているだけだ。まあいい。違法性はない。ただ、庶民投資家にとっては、100万、200万は大金だが、大資産家の彼らにとっては、それは、ワンコイン以下の感覚なのだ。一言で言えば、「クソが!」だ。ハッキリ言って、何の参考にもならん。昔、ロバート・キヨサキの「金持ち父さん・・」シリーズも何冊か読んだが、これはもっとひどかった。読んだ当時は、若かったこともあったが、具体的に何をすればいいのかサッパリわからなかったのを覚えている。あとで、バブル期にハワイの不動産投資で大儲けした人が書いた本だとわかった。これも「クソが!」だ。金持ち父さんはいずれバブル崩壊とともにスッテンテンになる。
株価が安い時に買えという、当たり前のことを言われても、その時に現金がなければ買えない。たいがいの個人投資家は、そういう時は、損切できなかった株に現金が塩漬けになっている。まことに腹立たしい限りだ。ロジャーズやバフェットらが言っているのは、カネを有り余るほど持っている人間の投資姿勢だ。まったく参考にならん。もう庶民向けの本など出すなと言いたい。どうせなら、学術的に有益なものを書け。
ジム・ロジャーズは、約2年前に、日本への投資はすべて引き上げた、と言っていた。最近は、また日本株を買っている、と言っている。いったい、どっちなんだ。以前は、日本から出るか、カラシニコフ(旧ソ連製の銃)を買え、などと的外れのことを言っていた。花輪陽子の誤訳でなければだが。これからは、朝鮮半島への投資だ、と推奨していた。彼はオックスフォードの大学院で歴史を学んでいる。投資には哲学と歴史の勉強が不可欠と自慢している。カネを右から左に動かして大金持ちになるには、その素養が必要だという。額に汗して働けとは一言も言わない時点で、すでに労働者を見下している。まあ、彼らも腋に冷や汗くらいは、かくのかもしれないが。
ジム・ロジャーズが間違いを犯しているのは、朝鮮半島の北半分は中国の同盟国だということだ。北の判断だけではどうにもならないし、北に民主的政権ができる可能性は、中国共産党が消滅しない限りは、ほぼあり得ない。それに、うすうす気付いたのか、少し前の本では、10年以内に朝鮮半島が統一され、日本国を凌駕する大国ができ、投資対象だと言っていたが、最近になって、10年~20年と言いだした。現実に目覚めて、読者にわからないように、こっそりと微修正している。中国と米国はいずれ覇権をめぐって争うことになる。米国にヘンな大統領が出来なければの話だが。中国がいかに急速に経済力をつけたとはいえ、自由のない国は必ず滅亡する。カネの流ればかり追って、世界が自由主義や人権尊重の流れに向かっていることを読めない愚かな投資家は必ず大敗する。私はそう願っている。